調査対象となった大学は、「首都圏」、「近畿」、「北陸・東海」、「中国・四国」、「九州・沖縄・山口」の5地域359大学。同地域在住のビジネス・パーソンや中学生以上の子供のいる父母、また教育関連従事者に対して、アンケート調査を実施した。実施時期は2010年8月。調査では、各大学の「認知度/認知経路」、「採用意向度」、「入学推薦度」や「子供の進学に対する意識」などのほか、大学や学生などに対する49項目に及ぶブランド・イメージを尋ねており、その結果から「大学ブランド総合力」を算出、最終指標にまとめランキング化している。
これまで企業経営・コーポレート管理やマーケティングの領域で語られることの多かった「ブランド」というキーワードが、ここにきて、様々なステークホルダーからの「大学評価」という点で注目を集めている。少子化・全入時代で、大学間の競争がますます激化している昨今、日本の大学を取り巻く環境は、悪化の一途をたどっている。そんななか、どう受験生やその父母を自校に引きつけ、「この大学こそは」と選んでもらうためにどんな方策を立てればよいのか、また、地域住民から愛される大学になるためには何が必要なのか―。それを解決するためのより所として、「大学ブランド」という考え方を取り入れる大学が増えているためだ。
そもそも、大学ブランド力の測定を論文数や学生数、財務諸表に頼らず、アンケート調査という手法で行なっているのは、「それがブランドかどうかは、発信者や作り手が決めるのではなく、受け手側が決める」というブランドの基本的性質を無視すべきでないという考え方によっている。「私の大学にはブランド力がある」と言うためには、客観的な他社からの評価が必要で、それがなければ単なる独りよがりに過ぎない。ブランドの根幹となる「個性や“らしさ”」、「他にはない差別性のある魅力」が、自校に有利に働いているかどうか、「外部から」でないとその判断は下せない。
今回の調査の結果、5地域それぞれの「大学ブランド偏差値」(大学ブランドの総合力を示す指数)第1位は、首都圏編が早稲田大学、北陸・東海編が名古屋大学、近畿編が京都大学、中国・四国編が広島大学、九州・沖縄・山口編が九州大学となった(表1)。
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