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超人気企業が欲しい人材、語学は?
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「大学や学部には一流、二流、三流の区分があり、さらに上には超一流というカテゴリーもございます。といっても「一番優秀な奴比べ」ではなく、あくまでも就職力で申し上げていますので、そこは誤解なきようにお願いします」
大学生への就職活動支援を行っている「我究館」の杉村太郎会長が独特の調子でこう話す。
杉村氏の分類によれば、超一流とは「東大なら法・経済・理・工学部、早稲田なら政経・法学部と理工学部のなかの伝統的な学科、慶応は法・経済・理工学部」であり、「東大の文・教養学部、早稲田の商学部、慶応なら総合政策・環境情報学部はその下のランクです。商学部はもう少し落ちますね」
文学部の場合は、さらにランクが下がると言う。
「早稲田の文学部は出版社などマスコミには伝統的に評価されていますが、外資系金融や総合商社といった学生に人気の超難関企業にはほとんど採用されていないというのが実情です。慶応の文学部も同様です。上智大の外国語学部英語学科は難関として有名ですが、就職力は若干落ちます。超一流ではありません」
語学に関しても、杉村氏には次のような持論がある。
「英語に関して言うと、「できていると有利」では決してなく、できていないと「何をやっているの?」というレベルになっています。英語なんて本気になれば数ヶ月で身につくものです。しかしながら、この時代に「英語ができなくてどうするの?」という意識は持って欲しい。英語に加えてポルトガル語やロシア語、中国語ができると非常に有利です。語学ができるだけではなくて、1月でもいいから実際に留学して欲しい。そして経済と文化を語れるようになって欲しいですね」
身も蓋もない言い方だが、現実に多くの学生を人気企業に就職させてきた実績を持つだけに、杉村氏の言葉には奇妙な説得力がある。
さて、本題である。日本の大企業はどんな人材を欲しがっているのか。杉村氏の指摘を心の隅に留めつつ、人気企業ランキングの常連である三菱商事、キヤノン、ソニー、みずほフィナンシャルグループの採用担当者に話を聞いた。
当然ながら、表向きの回答がずらりと並ぶ。ごく簡単にまとめると、どの会社も「大学」と「学部」は不問であり、「語学」「留学経験」も不利ではないが、決定的な要件にはならないという。そして学生時代に身につけた専門知識や外国語などのスキルは、ほとんど評価の対象にはならず、必要なら採用後に教育すればいいと考えている。
その代わり重視するのが、当人が持つポテンシャルだ。意地悪く表現すると、彼らが欲しているのは「積極性や行動力を持つ一方、配属先にはこだわらない従順なタイプ」と言うことになる。以下、個別の意見を参照しよう。
最初に登場してもらうのは三菱商事の採用担当者。
「大学・学部だけでなく、性別や国籍、留学などの経歴において多様な人材を採用したいと考えています。最終的に東大や慶応、早稲田、京大、一橋大の出身者が多くなりましたが、特にどの大学が有利ということではなく、あくまでも「本人次第」で選考した結果です」
多様性をうたうだけに、採用者は幅広い大学に渡り、女性の比率も高いが、特定の大学に内定者が集中しているという印象はぬぐえない。ある年では、採用人数の多い大学は多い順に慶応、東大、早稲田、京大、一橋で、二割強を慶応出身者が占める結果となっています。
因みに、各社の内定者数を慶応大学、早稲田大学で比較してみると、キヤノン、ソニー、みずほFGではほぼ同数であるのに対し、三菱商事だけが早稲田の2倍の人数の慶大生を採用している。
大学や学部にこだわらないというものの、三菱商事に入社したいのならば、早稲田より慶応へ進むのが無難かもしれない。
総合商社といえば海外勤務が花形。就職にも語学力がものをいいそうだが、「あくまでも人物本位、基礎能力重視の選考を行っています。そうした部分をクリアした上でなら、外国語の能力も生きると思います。役員からは「英語ができる、というだけで採っているんじゃないだろうな」と牽制されるんです」
もっとも、BRICsなどの新興国向けのビジネスが急拡大しているなかでは、次のような本音もあるようだ。
「現場からは中国語やポルトガル語、スペイン語、ロシア語に堪能な新人がいたら配属して欲しい、という声を聞いています。もちろん人物や基礎能力次第ですが、東京外語大や上智大でそういった語学を学んでいる学生さんは、ぜひ当社を受けに来て欲しいですね」
≫続き キヤノン、ソニー、みずほFGなどが欲しい人材は?
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